雷蔵の班が奇襲を受けたという知らせがあった。
しかし雨は容赦というものを知らない。俺らの情況などお構い無しだ。耳に刺さる音に不安を掻き立てられる。
苦渋の顔をしてそれを告げに来た兵助も動揺を隠しきれていなかった。
無造作に積まれた古木の間。片膝立ての忍び装束が三、四。
「反撃するか」
友の安否が分からないことがこんなにも不安だとは。
行動せずにはいられないこの追い詰められたような、想像もしなかった情動が生まれる。
咽喉の奥が寒い。
「いや待て、ここは他班の情報をもっと入手してから動いたほうがいい」
予想外の三郎の言葉に咄嗟に手が出る。
「お前…雷蔵が心配じゃねえのか」
怒鳴り上げてしまいそうな声をどうにか潰す。
出したことのない低音に自分自身も少し驚いた。
「お前ら!喧嘩してる場合じゃねえだろ!」
班の奴に制され仕方なく手を離す。表情の崩れないこいつの様は何とも腹立たしい。
遠くを見つめる冷静な横顔。
よく見ると、堪えるように奥歯を必死に噛み締め、微かに震えている。
鼻からする呼吸には余裕が無い。
精一杯。
三郎には似合わない喩えが今はしっくりくる。
そうか、こいつはこいつなりに―。
「…必ず、助けに行こうな」
「…ああ」
眼球は鋭く前方を見据える。
鈍色の空には雷鳴が轟めき、雨は勢いを増していく。
(篠突く雨)
感情論の竹谷とあくまで冷静な鉢屋
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